- 仮想通貨におけるインサイダー取引の現状
- インサイダー取引の概要
- NFTで問題になっているインサイダー取引について
こんにちは!サイト管理人のクリプト博士(@crypto_doctor00)です。
突然ですが、「インサイダー取引」をご存じでしょうか?
株式投資などでよく使われる言葉なのですが、仮想通貨においてもたびたび登場するワードでもあります。
この記事では、そんなインサイダー取引について詳しく解説していきます。
仮想通貨のインサイダー取引の現状
まず第一に、インサイダー取引は法律上禁止されています。
しかし、その対象はあくまで「株」などの金融商品に関する規制であり、このインサイダー取引の規制が「仮想通貨」にも及ぶのかということについては知らない人も多いと思います。
仮想通貨も投資行為の一種ですが、実は、株式などのように法律で直接的に規制が明言されていません。
となると、仮想通貨に関してインサイダー取引はどうなるのでしょう?。
クリプト博士
コインベースに関するインサイダー取引疑惑
仮想通貨に関するインサイダー取引で有名なのが「コインベース」で起きたものですね。
【コインベースの事例】
民事・刑事の責任を追及されることとなった「Ishan Wahi氏」は、コインベースの資産・投資商品グループのマネジャーだった人物です。
同氏は、2021年6月から22年4月にかけて複数回にわたり、コインベースが新たな暗号資産の取扱いを開始する際、そのことを公表する「上場アナウンスメント(listing announcement)」の内容をその公表前に自分の家族や親しい友人に伝え、その情報をもとに、家族らはコインベースに上場されることとなる暗号資産を事前に買付けて上場後に売却し、少なくとも110万ドルの利益を違法に獲得したとされています。
米国の証券取引委員会(SEC)は、Ishan Wahi氏が、公表されれば暗号資産の価格や取引状況に重要な影響を及ぼすような未公表情報にいち早くアクセスできる資産・投資商品グループのマネジャーという地位を利用して、コインベースに対して負う信認義務および守秘義務に反し、これはコインベースに対する信認義務等にも反するものだという認識を示しつつ、もしくは認識を欠いたことに重大な過失がありつつ、証券法の規制を受ける投資契約である暗号資産の違法なインサイダー取引を行ったと主張しています。
これに対して、コインベース側は、仮想通貨は証券に該当しないといった趣旨の反論していて、従来型の暗号資産規制のエンフォースメントを一層先鋭化させることにつながるのか、あるいは規制手法の転換点となるのか、今後の展開が注目されています。
bitflyerに関するインサイダー取引疑惑
仮想通貨に関するインサイダー取引疑惑は日本でも起こっています。
2018年1月31日に、itflyer(仮想通貨取引所)において、仮想通貨「LISK」が上場しました。
この上場で、利益の得た投資家の中には、「LISKが上場することをあらかじめ知っていたことが儲けに繋がった」と公表している人がいたことで、水面下で「インサイダー取引」が行われていたのではないか?という噂が広まりました。
こちらに関しては、2018年4月23日に日本仮想通貨交換業協会が設立されるなど法整備が進められていますが、真相については謎のままです。
ちなみに、bitflyerでは日本仮想通貨交換業協会が設けた自主規制ルールにのっとり、以下のような場合に「内部者」に該当するとし、公表しています。
内部者とは、特定暗号資産(仮想通貨)の開発等を行う団体に所属している、または関係している等の事由により暗号資産(仮想通貨)関連取引の判断に著しい影響を及ぼす可能性のある情報を取得できる環境にある方を指します。具体的には次の(1)~(8)のいずれかに該当する場合、内部者に該当します。
【当社における内部者の定義】
(1)当社が取り扱う暗号資産(仮想通貨)の発行者及び管理者(※ 1)
(2)(1)の者の関係会社(※ 2)
(3)(1)および(2)に掲げる者の主要株主(※ 3)
(4)(1)および(2)に掲げる者の役員(※ 4)
(5)(4)に掲げる者でなくなった後1年以内の者
(6)(4)に掲げる者の配偶者及び同居者
(7)(1)および(2)に掲げる者の従業者
(8)暗号資産(仮想通貨)取扱業者の主要株主、役員、従業者(※ 5)※ 1 当社が取り扱う暗号資産(仮想通貨)の一覧はこちらをご参照ください。
※ 2 関係会社とは財務諸表提出会社の親会社、子会社及び関連会社または、財務諸表提出会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等をいいます。
なお、関連会社とは、会社等及び当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社等をいいます。
※ 3 発行株式を10%以上保有する株主のことをいいます。
※ 4 取締役、会計参与、監査役、執行役、理事、監事その他これらに準ずる者をいいます。
※ 5 暗号資産(仮想通貨)取扱業者については金融庁が公表している仮想通貨交換業者登録一覧をご覧ください。
クリプト博士
インサイダー取引とは
上記の例から、インサイダーというのは内部関係者がかかわることらしいというのはご理解いただけたかと思います。
ここではさらに詳しく、インサイダー取引について説明します。
主に株式で問題になる取引方法です。株式では、上場した会社の関係者や情報の受領者がその会社の株価に影響を与える「重要な事実」を知っている状態で、その事実が公表される前に会社の特定有価証券などの売買を行うことをいいます。
このような取引をインサイダー取引と呼び、金融商品取引法(通称:金商法)では禁止されています。
インサイダー取引が成立する条件は、以下の要件をみたす場合です。
- 規制の対象となっている人が
- 会社における重要な事実(株価に影響を与える事実)を知りながら
- その事実が公表される前に
- 会社の特定有価証券などを売買すること
クリプト博士
1.規制の対象者
インサイダー取引の規制の対象になるのは、以下のような人たちです。
- 会社の関係者
- 情報の受領者
会社の関係者には、上場した企業の役員やアルバイトを含む従業員が含まれます。さらに、これらの人で退職後1年経っていない人も該当者となります。
また、上場した企業の大株主や取引先など、この企業と契約を結んでいる人や企業も会社の関係者とみなされます。
要は、上場した企業の業務などに関する重要な事実を知ることができる立場にある人や企業は、すべて会社の関係者に含まれるのです。
一方、情報の受領者とは、会社の関係者から企業の業務などに関する重要な事実を直接聞いた人や企業のことをいいます。
これらに該当する人や企業を「第一次情報受領者」といいます。
クリプト博士
再びトップコート国際法律事務所公式サイトで紹介されている例を引用すると次のようになります。
たとえば、上場企業である甲社の元役員であるA(退職後2ヶ月)から、甲社の業務に関する重要な事実をAの友人であるBが直接聞いたとしましょう。さらに、その事実をBの妻であるCに伝えた場合、Aは会社の関係者に、Bは情報の受領者にそれぞれあたりますが、Cは情報の受領者にはあたりません。
2.会社における重要な事実
次に、「会社における重要な事実」ですが、これについては、金融商品取引法などで具体的に列挙されていますが、以下のような事実が該当します。
- 会社の合併や分割
- 新株予約権の発行
- 新製品や新技術の企業化
- 事業の譲渡あたる
- 業務提携
- 利益の配当
- 業務の過程で発生した損害
このほかにも、「重要な事実」は細かく決められていますが、「重要な事実」にあたるかどうかは、そのケースごとに判断されます。
クリプト博士
3.公表
インサイダー取引に該当するかどうかは、取引が重要な事実の「公表」の前だったか後だったかが重要な判断材料になります。
そのため、何をもって「公表」されたといえるのかを正確に理解する必要があります。
インサイダー取引に関しては、テレビや新聞などの2社以上のマスコミが重要な事実を公開してから12時間を経過することで公表したとみなされます。
例えば、新聞社1社と放送事業者1社が重要な事実を報道した場合、後に行われた報道から12時間が経過する必要があります。
4.特定有価証券
金融商品取引法において政令で新たにその範囲を定めるとされている「資産金融型の金融証券」です。
具体的には、以下のような金融証券が「特定有価証券」にあたります。
- 投資信託
- 外国投資信託の受益証券
- 特定社債
- 優先出資証券
- 企業が発行する株券や社債券
- 新株予約権証券…etc
インサイダー取引をしたらどうなる?
先ほどご紹介したインサイダー取引の成立要件を満たすとインサイダー取引に該当してしまいます。
インサイダー取引とみなされると、重いペナルティが課せられます。
インサイダー取引にあたると判断された場合のペナルティは以下の通りです。
- 最大5年の懲役
- 最大500万円の罰金
上記のいずれか、または両方が科せられます。
また、インサイダー取引によって得た資産や財産については、没収もしくは追徴が科せられます。
さらに、インサイダー取引を行った個人だけではなく、会社(法人)に対しても最大5億円の罰金が科せられます。
仮想通貨取引でもインサイダー取引は違法か?
インサイダー取引は株式などの取引を対象に金融商品取引法で規制されていますが、仮想通貨取引においては、インサイダー取引を直接禁止するようなルールはありません。
しかし、金融商品取引法が仮想通貨取引に適用されれば、仮想通貨取引も「インサイダー取引」にあたる可能性が出てきます。
この点について、現時点では、政府は「仮想通貨取引に金融商品取引法は適用されない」という見解をとっています。
そのため、現在の政府の見解によれば、少なくとも現状においては仮想通貨取引に金融商品取引法は適用されません。
クリプト博士
NFTで問題になっているインサイダー取引
NFTという新しい技術が出てきて、こちらでインサイダー取引が問題にある事例が出てきました。
「Non Fungible Token」の略称で、直訳すると「非代替性トークン」となります。
クリプト博士
NFTについては以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
NFTにとって重要なマーケットプレースの1つであるオープンシー(OpenSea)で起きたインサイダー取引スキャンダルは、NFTの世界で気軽なコレクターたちがシステムがインサイダーに有利に不正操作されていないことを確約してもらう必要性を痛感させるものとなりました。
オープンシーのプロダクト責任者「ネイト・チャステイン(Nate Chastain)」氏は、ブローカーが株式をフロントランニングするのと同じようにNFTをフロントランニングしていた疑惑を受けました。
チャステイン氏にかけられた嫌疑は、一群のイーサリアムアドレスが、オープンシーのホームページに掲載される少し前にNFTを買い占め、価格が上がると売却したというものです。
イーサリアム上での取引記録であるEtherscan.io上のデータは、これらのアドレスがチャステイン氏に関連することを示していたようです。
コレクターたちは常に、「アルファ」と呼ばれる、次なる人気NFTプロジェクトをいち早く獲得するための特別な情報を探し求めています。
オープンシーは、1日の取引高が約7700万ドルの、大物からも支持を受けるNFTエコシステムの中心です。
オープンシーウェブサイトのフロントページにNFTが掲載されると、価値が上がる可能性が高いです。
チャステイン氏は、「フロントページに掲載するNFTを決定する同社プラットフォームの戦略について非公開の情報を使い、NFTを売買して利益を得ていた」との疑惑をかけられました。
これに対して、「第三者による監査」を受けて、チャステイン氏はオープンシーの職を辞任しました。
NFTでできることは多いです。
デジタルコレクションは、オンラインコミュニティーでパスポートの働きをしたり、アーティストがファンと交流するためのツールとなったりしますので、その影響は大きく、インサイダー取引に関しても法整備は進むと思われます。
まとめ
仮想通貨におけるインサイダー取引について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
インサイダー取引は、株では禁止されているものの仮想通貨ではまだ禁止されていません。
ただし、先ほどの例でもあげたとおり、今後仮想通貨市場においても規制される可能性が高いです。
インサイダー取引のペナルティは非常に重いため、ご自身が取引の該当しないかどうか十分注意しましょう。