クリプト博士
- 仮想通貨にかかる税金の基礎知識
- 移動平均法と総平均法の違いについて
- 仮想通貨投資の税金あるある
仮想通貨投資である程度の利益が出ると税金を収める必要がありますが、その際に仮想通貨投資の所得を計算する方法として「移動平均法」と「総平均法」があります。
この記事では、そんな移動平均法と総平均法について詳しく解説します。
税金関係は少し難しいですが、必須知識なのでぜひ最後まで目を通してみてください!
仮想通貨にかかる税金の基本
仮想通貨取引による所得が20万円を超えると確定申告が必要になる場合がありますので注意が必要です。
また、仮想通貨取引による所得は原則として「雑所得」に分類されます。
雑所得には以下のような特徴があります。
- 総合課税:給与所得など各種の所得と合計した金額に対して課税される
- 累進課税:所得額が増えるほど税率が高くなる
- 損益通算禁止:損失が出た場合、他の利益と相殺できない
- 損失の繰越控除禁止:生じた損失は翌年以降の利益と相殺できない
仮想通貨の税金を申告しなかった場合のペナルティ
確定申告の税金を申告しなかった場合、様々なペナルティが課せられます。
例えば、延滞税など。こちらは、最大14.6%とかなり高い税率で、さらにお金を払うよう指導されてしまいます。
また、納める税金が少なかった場合は、最大15%の「過少申告加算税」の対象になります。
この他にもペナルティはたくさんあります。
クリプト博士
なお、仮想通貨に関する税金については、仮想通貨取引にかかる税金の計算方法や確定申告手順を解説で詳しい情報をまとめているので、参考にしてみてください。
仮想通貨取引の所得計算法
確定申告を行う際には、取引の種類にあわせて仮想通貨を購入したときの単価を計算して、取引で得た利益を計算する必要があります。
多くの人が所得税法が指定するところの移動平均法・総平均法を用いています。
税務署への届け出を行えば、基本的にはどちらを採用することも可能です。
クリプト博士
移動平均法とは
仮想通貨を購入するごとに新しい仮想通貨の取得価額とこれまで購入した仮想通貨の残高を平均し、所得を計算する方法です。
例として以下の取引が発生したときのことを考えてみましょう。
- 4BTCを2,000,000円で購入
- 6BTCを3,500,000円で購入
- 5BTCを3,000,000円で売却
- 5BTCを2,000,000円で購入
それぞれの取引で以下の計算式を用い、平均取得原価を算出、更新します。
【その時点の取引価格合計】÷【その時点の保有総数】=【平均取得原価】
この計算式に上記の取引結果を当てはめると次のようになります。
①の時点での平均取得原価は500,000円(2,000,000円÷4BTC)
②の時点での平均取得原価は550,000円(5,500,000円÷10BTC)
③で生じた収益は以下の計算式を用います。
【売却価格】-(【平均取得原価】× 【売却数量】 )= 【収支金額】
実際に当てはめると…
3,000,000円-(550,000円×5BTC)=250,000円
となります。
④の時点での平均取得原価は以下の計算をして算出します。
取引価格合計 = ①2,000,000+②3,500,000-③2,750,000+④2,000,000 =4,750,000
保有総数 = ①4+②6-③5+④5 = 10
よって、平均取得原価は475,000円(4,750,000円÷10BTC)となります。
なお、移動平均法を利用する場合のメリット・デメリットは以下の通りです。
- 実際の取引の利益と近くなる
- 納税準備がしやすくなる
- 総平均法と比べて計算が煩雑
よく言われるのが、移動平均法と総平均法を比べた場合に、移動平均法の方が経済的な実態により即した方法として優れているということです。
取引を行うごとに売却原価を計算しなおすため、取引の実態を最も反映しており、より正確な所得を計算できます。
しかし、移動平均法は、取引のたびに平均取得原価を計算し直すため、非常に計算が煩雑になり手間もかかります。
総平均法とは
1年間の購入平均レートをもとに計算した取得価額の合計と、売却合計金額の差額(所得)を計算する方法です。
総平均法では計算方法を用います。
例として以下の取引が発生したとしましょう。
以下の計算式で集計基準期間の平均購入原価を算出します。
【集計基準期間の購入総額】÷【集計基準期間の購入総数】=【平均購入原価】
①~④が集計基準期間に含まれていたとして以下のように計算します。
7,500,000円÷15BTC=500,000円
次に集計基準期間の売却総額と売却総数より、以下の計算式で収支金額を計算します。
【売却総額】-(【平均購入原価】×【売却総数】)=【収支金額】
3,000,000円-(500,000円×5BTC)=500,000円
なお、総平均法のメリット・デメリットは以下の通りです。
- 移動平均法に比べて計算が容易
- 実際の取引の損益と大きく異なる可能性がある
- 集計期間末日にならないと損益が計算できないため、納税準備がしにくい
上記のように、通年で計算した場合は同じ金額になります。しかし、単年度で計算した場合はどちらの計算方法を選ぶかによって所得に差が発生します。
なお、国税庁の資料には「同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の当該仮想通貨の取得価額の算定方法としては、移動平均法を用いるのが相当です(ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えありません。)」と記載されています。
クリプト博士
仮想通貨の総平均法・移動平均法の違いまとめ
取得原価の計算方法について、前提仮想通貨の購入単価の計算に移動平均法を使用した場合と総平均法を使用した場合の計算結果は、単年度では異なるものの、将来にわたって生じる所得金額は一致します。
しかし、2017年度の仮想通貨市場のように、基準期間を通じて相場が上昇トレンドの場合に総平均法を用いると時価のあがった後半の期間に仮想通貨の購入を行うことになるので、所得計算を行う売却時に利用する取得価額(単価)が上昇することになり、結果として所得金額が少なくなることが多くなります。
なお、上昇相場といっても、短期でみれば時価は上下しているので、売買のタイミングによっては移動平均法・総平均法それぞれで計算した所得金額の大小は逆転することもあるので、注意しましょう。
また、2018年度以降仮想通貨の市場が下降トレンド入りするようなケースでは、上記と逆の状況になりますね。
まとめると次のようになります。
移動平均法と総平均法の違い | |
---|---|
移動平均法 | 総平均法 |
・購入の都度取得価額(単価)を算出するため、計算が煩雑 ・経済的な実態に即した計算方法 ・年度中に所得計算ができるため、所得の見積りや納税資金の準備が行いやすい |
・年度内のすべての購入を集計し、一度で単価を計算できるため計算が容易 ・購入タイミングや市場のトレンドによっては経済的な実態と乖離してしまう可能性がある ・年度が終わらないと取得価額(単価)がわからないため納税資金の準備が行いづらい |
仮想通貨投資の税金関係あるある
最後に、仮想通貨投資をしていてよくある疑問を二つほどご紹介しておきます。
仮想通貨の税金の年またぎでの計算方法
株式投資やFXなどでは、確定申告によって損失を繰越せる制度があります。
【具体例】
例えば、FXで2021年に100万円の損失を出した際、その損失を確定申告しておきます。すると2022年に300万円の利益が出た場合、100万円の損失を相殺して、200万円の利益として申告することができるのです。
しかし、仮想通貨では、こうした損失の繰り越しが認められていません。
仮想通貨を取得した際の「平均取得単価」は、年度をまたぐ場合は引き継がれ、翌年の利益計算の際に使われます。
カレン
クリプト博士
例えば、2021年末時点において、1BTCの平均取得単価が300万円で翌年1月にその1BTCを500万円で売った場合、500万円ー300万円=200万円の利益となります。
このように、その年の平均取得単価は税金の計算時に利用されますので、その年に利益が出ていない場合でも損益計算を行い、保有している通貨の平均取得単価を把握しておくことが重要です。
高すぎる税金が払えないときは?
税金額が高すぎて納税を先延ばしにすると、延滞税などが発生してしまいます。さらに税務署から督促状が届き、最終的に財産を差し押さえられる可能性もあります。
そのため、年末に税金額を計算した結果、税金が払えないと分かったら、まず税務署に相談して「納税の猶予」を認めてもらいましょう。
その際は、他の仮想通貨の売却など「換価」を提案されることも考えられます。
クリプト博士
まとめ
仮想通貨投資における移動平均法と総平均法について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
仮想通貨投資で利益が出た場合、納税は絶対に避けられません。
そのため、納税額を計算するための所得計算方法である「移動平均法」や「総平均法」もほぼ必須知識と言えます。
一度で理解できなくても、何度も読み返して必ず理解しましょう。